こんにちは。デザイン顧問のMayuです。
前回の記事では、Webサイトの役割を理解することの重要性をお話しました。
今回の記事では、役割を達成するWebサイトをデザインするために、目標を定めた上で細分化することの重要性をお話します。
クライアントワークに携わるクリエイターの方はもちろん、デザインを外部に依頼されている方にも、ぜひ読んでいただけたらと思います。
目次
Web制作に必要な「定性目標」
Webサイトの役割とコンバージョンが決まったら、Webサイトのコンセプトとコンテンツ企画を立案し、サイト設計へと進みますが、このタイミングで必ず設定すべき項目があります。
それは、Webサイトの方向性である「定性目標」です。
この定性目標とは、Webサイトがユーザーに対してどのような印象を与えるか、どのような価値観やコンセプトを表現するか、どのような使いやすさやユーザー体験を提供するかなど、Webサイトが目指すべき状態を指します。例としては「高級感を演出する」「使いやすくて親しみやすい雰囲気を出す」「信頼感を出す」「ブランドイメージを強化する」などが挙げられます。
Webプロジェクトに定性目標を設定することで、デザイナーが何を目指してデザインをするべきかが明確になる上、効率的かつ正確にデザインワークを進行することが可能となります。また、設定した定性目標に合わせて、必要な素材や色彩、レイアウトなどを選定することができ、より一貫性のあるデザインを作り上げることができるのです。
こういった定性目標は、クライアントから要望として提示される場合もありますが、多くの場合は企画段階でのユーザーニーズの調査・分析やペルソナ設計などから最適な方向性を設定します。
しかし、定性目標が決まったからといって、そのままデザインに入るべきではありません。
さらに必要とされるのが「定性目標の分解」なのです。
定性目標を分解するメリット
定性目標の分解が必要な理由は、定性目標「だけ」では個人間の認識にブレが生じ、ターゲットユーザーに響く方向性にならない可能性があるからです。
先に挙げたように、定性目標は「高級感を演出する」「使いやすくて親しみやすい雰囲気を出す」といったように、良くも悪くもざっくりとした言葉で表現される場合が多いです。プロジェクトの内部で方向性が分散する可能性があるばかりか、完成後のWebデザインがターゲットユーザーに響かないことすらあるのです。これでは、プロジェクトの目標を達成するとは到底言えません。
定性目標を詳細に言語化し、ターゲットに響く方向性を導き出す必要があるのです。
例として「高級感を演出する」という定性目標が設定された場合を考えてみましょう。「高級感」を「暗い色調でシックなイメージ」と捉える人もいれば、「白ベースの上品で落ち着いたイメージ」と捉える人もいます。よって、デザインに入る前には「ターゲットユーザーに響く高級感とは何か?」という点を掘り下げる必要があります。
ユーザーの好みは、性別や年齢、嗜好などで千差万別です。イメージ写真、洗練されたUI、心に響くコピー、効果的なカラーやフォントの選定など、どういった方向性がターゲットユーザーによい印象を与え、コンテンツに興味を持ってもらえるのかを考えます。その上で、導き出した方向性が本当に定性目標を達成しうるのかについて、プロジェクト内で確認・検討しましょう。
“足りない”または“ずれている”と感じる場合は、より詳細に分解と検討が必要です。定性目標を分解した結果、定性目標自体の修正が必要だと判明することもあるので、プロジェクトメンバーや担当デザイナーが納得するところまでしっかり分解作業を行いましょう。
このような定性目標の分解を行わずにデザインを進めると、「担当デザイナーが考える」方向性に偏ってしまいがちです。その方向性が必ず間違いとはいえませんが、プロジェクト全体で分解を行った場合に比べてターゲットユーザーに響く可能性は下がるでしょう。
個人で感性が異なるのは当然のことです。だからこそ、制作するWebサイトに必要な「素敵なデザインとは何なのか」について、プロジェクトメンバーで共有する必要があります。
そして、決まった方向性を共有し指針とすることで、プロジェクト全体でターゲットユーザーに響くWebサイトの実現に向かって進むことができるのです。
メンバー全員で役割を達成するWebサイトを目指そう
定性目標を分解するメリットは、デザインワークのみに留まりません。
- デザインの一貫性が確保され、時間短縮につながる
- 制作したデザインの言語化が容易になり、説得力が出る
- デザインの妥当性の判断がしやすくなる
このようなメリットはプロジェクトの進行をスムーズにします。そうすることで結果的に優れたデザインの創出が可能となるのです。
見た目のみで全てのターゲットを魅了し、対応が追いつかないほど爆発的に問い合わせが増える…という奇跡は現実的ではありません。目標に最速で到達するためには、分析に基づいた指標の設定が必要不可欠、そしてそれに基づいたデザイン制作が求められます。
プロジェクト、そしてデザインは何を解決するものなのか? ターゲットユーザーにとって価値のあるデザインとは何なのか? そうした検討が、より効果的なUXデザインの実現へとつながり、役割を達成しうるWebサイトになるのです。
最後になりますが、一般的に定性目標とセットで設定されることが多い「定量目標=数値や数量に落とし込む目標」について少しだけ触れておきます。
結論から申し上げると、コンバージョンの定量目標を指標とすることは、推奨できません。
なぜなら、Webサイトを始めとしたクリエイティブは、数値を成果として確約できるものではないからです。
コンバージョンの定量目標としてイメージされやすいのは、コンバージョンボタンのクリック率やフォームの送信数などですが、Webサイト単体で達成することは非常に難しいと言われています。Webサイト本体の他に、検索エンジンで表示されるリスティング広告、Google AdWordsなどへの広告出稿、SNSでの情報発信、PRなど、サイトの種類に応じて幅広い集客施策が必要です。
定量目標を設定すること自体の難易度は高くありません。しかし、前述の通り数値を確約できないものである以上、それ目標として約束することは逆に不誠実とも言えます。
Webサイトの役割を把握した上で目標を定義し、明確なエビデンスとロジックに基づいたリニューアルプランを提案し実現する。それが多くのWebサイト制作で約束できる成果です。
必勝メソッドが確立されることはありません。時代も流行も止まることはなく、ユーザーの欲求は日々変化します。だからこそ、クライアントとプロジェクトメンバーでその時のベストを模索し、目標に向かってチャレンジし、改善を重ねて進んでいくことが「役割を達成する」Webサイトを実現するために必要不可欠なのではないでしょうか。
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「ええね!」する
名古屋を拠点としたWeb制作会社、株式会社テラ
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