こんにちは、顧問の杉山です。
Webデザインセミナー「メディアと時を超えるデザインの本質」の紹介、第4回は、手で描くことの大切さについてです。パソコンで制作することが当たり前のこの時代に、なぜ手作業が必要なのでしょうか?
Webデザインを始めたい方、デザイナーのマインドを知りたい方はぜひお読みください。
目次
クリエイティブの基本は手作業
私のクリエイティブの基本は手で描く、作ることです。ずーっとそうでした。だから、多分そういった感覚が染み付いてるんだと思います。
冒頭にもお話したように、写植の切り貼りとか、みんな手作業ですから。もっと言えばワープロ(※1)すらなかったんで、コピーもみんな手書きですよ! ちなみにFAXがオフィスにやって来たのは、業界に入って数年後です。それまでは全部「足」で運んでいました(今回「足」に関しては取り上げません)。サムネイル、カンプ、ラフスケッチ、フィニッシュ。タイトルとか、カンプのときはポスターカラーと筆で描いてました。フォントの構成やバランス感覚を手で覚えてたんですね。
※1:「ワードプロセッサ」の略称。文書を作成するための機械で、パソコン普及前に広く使われていた。
直結する手と頭
手は脳と直結している。そう思ってます。
たとえば鉛筆を右から左へ動かす、それが何センチくらいなのか、どっちへ動かしたのか、それがちゃんと脳に伝わりますよね。それって、描いたものがそのまま意識に刻み込まれるんです。
でも、マウスやキーボードはそうは行かない。マウスを1センチ動かしても画面の中は1メートルだったりする。その動きがいくら刻み込まれてもねぇ。それはツールの動かし方です。やっぱり、パソコンはイメージの最終定着に使いたいですね。脳にデザインをやってることを覚えさせるなら、手を動かさなきゃ。それを毎日こなすこと。繰り返すこと。ボリュームが大切なんです。
頭の中に思い浮かべているだけじゃデザインにならないです。外へ出さなきゃ。パソコンは手っ取り早いだろうけど、間に挟まっているものが分厚すぎます。頭には継続的な負荷が効くんですよ。気に入ったデザインを手でなぞるってのも、いいですね。トレーシングペーパーなんて安いもんです。いいものはなぞっちゃいましょう。ここの空きはこれぐらいがちょうどいいんだ、とか、ここにこんなエレメントが入ってる、とか。ちゃんと手が脳へ伝えて覚えてくれて、次第に自分でできるようになります。
軌跡が残ることの意味
手でやったことって、いろいろ連動して残るんですね。定着した紙に残る、記憶として頭に残る、そして感覚として手に残る。
そして、ここ重要。間違ったこともちゃんと残る。消しゴムで消してはダメです。パソコンだと間違ったらすぐ消しちゃうでしょう。正しいものしか残らない。悪いことはなかったことに。それってもったいないですよ。両方比べたり、ああ、あのときはー、っていう後悔がちゃんと感じられるものって大切じゃないですか。それも含めて全部、自分の思考の軌跡なんですから。
手で描くってのは目的地までリニアじゃない。いろいろ寄り道をする。そこがいいんです。だから、雑談とかでラクガキとかも大いにしてください。自分が打ち合わせのときにそんなことばかりしてるんで、ぜひ皆さんにも共感してもらいたいです。
ワイヤーも手で描こう
手を動かすことは、すなわち描くこと、書くこと。それを推奨しているわけです。
というのも、思いってのが、ちゃんと紙面に表れるんですよ。強く思っていることは筆圧が強くなったり、大きく書いたり、ぐるっとまるで囲んでみたり、アンダーバーを引いてみたり。写真を大きく扱いたいなら大きく枠を書く。そのときの気持ちがリアルに現れるんですね。むしろ現れるように描いてほしい。そうなるように意識して描いてほしい。それができると、説明もすごく分かりやすくなります。
そういったことはサムネイルだけではなくて、ディレクターがワイヤーを作るときにもやるといいなと思います。ワイヤーまで?っておっしゃる方、何度も言っているように、昔は全部手ですから。どんなページものも手で描いてましたから。あ、もちろん納期優先でいいですからね。杉山が言ったからこんなに時間かかっちゃったてのはなしで。でも前回作ったものをほとんどコピペするとかは、少なくともデザイン力アップの練習にはなりませんね。
手で描くと見えてくるものって多いんですよ。あるいは、構成がすごく分かりやすくなる。このボタンがもう少し目立った方が、とか、全体にボリューム多いんじゃないの、とか、どんどん分かってくる。画面が自分のものになってくる。見栄えとか全然関係ないですから。それを作っていく過程が大切なんです。
システマチックではなく、一つひとつの要素を大切に扱い、丁寧に定着していくこと。それをわかってほしいですし、なにより、それがやってることをクリエイティブにしていくことだと思うんです。自分の意思でやっていることがはっきりわかること。そこです。
とはいえ、われわれにとって仕事は結果がすべて、という言い方もできます。そのとおりです。オールオアナッシングです。でも、その結果をよりよいものにするためには過程をしっかりやっておくことが大切だし、苦労すること、蓄積すること、引き出しをたくさん作ること、それはパソコンのハードディスクの中やデータベースではなく、頭の中につくってほしい。叩き込んでほしいのです。
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「ええね!」する
名古屋を拠点としたWeb制作会社、株式会社テラ
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